農地を買いたい非農家必見!審査に通る営農計画書の書き方から公的支援まで徹底解説
「農地を買って、家族で農業を始めたい」
そんな夢を持ったのは、末っ子が生まれて間もない頃のことでした。
4人の子どもたちに安心・安全な食べ物を食べさせてあげたい。いつからか、そんな気持ちが強くなって。うちは母方の祖父母(67歳)と同居しているんですが、祖父がずっと家庭菜園を続けていて、「農業っていいな」とじわじわ思い始めていたんです。
ただ、私たちはいわゆる「非農家」。農業をやったことがなく、農地も持っていません。そんな状態で農地が買えるのかどうか、まったくわからないところから調べ始めました。
調べてみると、「農地の購入には許可が必要」「農業委員会に申請しないといけない」という情報がどんどん出てきて、最初は正直ちょっと怖気づいてしまいました(笑)。
でも実際に農業委員会に問い合わせ、専門家にも話を聞いてみると、非農家でも農地を購入できる道はちゃんとあるとわかりました。しかも2023年の法改正で、以前より始めやすくなっているんです。
この記事では、農地を買いたい非農家の方に向けて、私が実際に調べて理解した内容をまるっとシェアします。農地法3条の許可条件から、審査の要となる営農計画書の書き方、さらに新規就農者が使える公的支援まで、ぎゅっとまとめました。
非農家でも農地は買えるの?まず知っておきたいこと
結論からいうと、非農家でも農地を購入することはできます。ただし、普通の不動産を買うようにはいきません。農地を売買するには、農地法第3条に基づく農業委員会の許可が必要です。
農地は国の食料生産を支える大切な土地。誰でも自由に売買できてしまうと、農地がどんどん減ってしまいます。だから法律で「農業をきちんとやれる人にしか売れない」というルールが設けられているんですね。
許可なしで売買しても契約は無効になり、罰則(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)の対象にもなるため、必ず手順を踏む必要があります。
なお、農地を「相続」する場合は許可が不要ですが、相続を知った日から10ヶ月以内に農業委員会への届出が必要です。また2024年4月からは相続登記も義務化されました(3年以内)。「親から農地を相続した」という場合はまたルールが異なるので、別記事を参考にしてみてください。
今回の記事は「他の農家さんや所有者から農地を購入したい」という非農家・新規就農希望者の方向けの内容です。
農地法3条許可の「3つの絶対条件」を確認しよう
農地法3条の許可を受けるには、購入する側(譲受人)がいくつかの基準を満たす必要があります。中でも絶対に外せない3つの条件がこちらです。
①全部効率利用要件
取得予定の農地はもちろん、すでに所有・賃借しているすべての農地を効率的に耕作できる労働力・機械・技術があることが求められます。
「広い農地が欲しい」という気持ちはわかりますが、労働力や機械が伴わない計画は「管理しきれない」と判断されて不許可になることも。身の丈に合った面積を申請することが大切です。
②農作業常時従事要件(年間150日以上)
農地を取得する本人またはその世帯員が、原則として年間150日以上農作業に従事することが必要です。
「週末だけ畑仕事をしたい」「家庭菜園の延長で」というレベルでは、事業としての農業とはみなされず、許可が下りない可能性が高いです。農業を「本業」あるいはそれに近い形でやる意思と計画が必要です。
私の場合、祖父母が一緒に農作業を手伝えることや、子どもたちも手伝える年齢になっていることを踏まえると、世帯全体での従事日数は確保しやすいかもしれないと感じました。
③地域との調和要件
農業は水路の管理や農道の草刈りなど、地域での共同作業が不可欠です。周辺の農業利用に支障を与えず、地域のルールを守って協調していけるかどうかも審査されます。
農業委員会への相談担当者に聞いたところ、「書類の前に、まず近隣の農家さんへの挨拶をしてもらうと審査がスムーズになることが多い」と教えてもらいました。熱意と誠実さを示すことも大事なんですね。
【2023年4月改正】下限面積50aの要件が廃止に!
以前は農地を取得するために「都府県では50アール(5,000㎡)以上を耕作する」という下限面積要件がありました。これが非農家にとってのかなり高いハードルでした。
ところが2023年(令和5年)4月の農地法改正でこの下限面積要件が廃止されました!
これにより、小さな面積から農業を始めたい人でも農地を取得しやすくなりました。「まず小さな畑から試したい」という方には朗報です。
ただし、面積の縛りがなくなっても「効率的に利用できるか」「150日以上従事できるか」という計画の質は変わらず問われます。面積が小さくても、いい加減な営農計画では許可が下りないので要注意です。
農地を取得するまでの流れ【6ステップ】
非農家が農地を購入するときの全体の流れをまとめました。
STEP1|農地を探す
農業委員会や市区町村の農政担当課への相談のほか、「eMAFF農地ナビ」(農林水産省が提供するポータル)を使うと、全国の農地情報を地図で確認できます。所有者の「貸したい・売りたい」という意向も表示されるため、交渉のとっかかりとして便利です。
STEP2|農業委員会へ事前相談(←これが最重要!)
農地の候補が決まったら、売買契約を結ぶ前に必ず農業委員会に事前相談に行きましょう。ここをスキップするのは絶対NGです。
事前相談では「この計画で許可が下りそうか」の感触がつかめます。その地域特有のルールや、営農計画書の書き方のアドバイスもしてもらえます。白紙で行くより、ある程度計画をまとめたメモを持参するとスムーズです。
STEP3|停止条件付きで売買契約を結ぶ
農業委員会の許可の見込みが確認できたら、売買契約を締結します。この際、「農業委員会の許可が得られなければ契約を解除する」という停止条件を契約書に必ず盛り込みましょう。
許可が下りないと所有権移転の効力が発生しないため、トラブルを防ぐためにもこの特約は必須です。
STEP4|農業委員会に許可申請書を提出
売主と買主の連名で「農地法第3条許可申請書」を提出します。申請には農業経営計画書(営農計画書)など複数の書類が必要です(次の章で詳しく解説します)。
申請の締め切りは多くの農業委員会で毎月10〜15日頃と決まっています。1日でも遅れると翌月になるため、スケジュールに余裕を持って準備しましょう。
STEP5|審査・許可証の交付(約1〜2ヶ月)
申請後、農業委員会の書類審査と現地調査を経て、月例総会で許可・不許可が決定されます。許可証の交付まで通常1〜2ヶ月程度かかります。
STEP6|代金決済・引き渡し・所有権移転登記
許可証が交付されて初めて契約の効力が発生します。売買代金を支払って農地の引き渡しを受け、法務局で所有権移転登記を申請すれば完了です。許可前の代金支払いや引き渡しはトラブルのもとになるので、必ず許可後に行いましょう。
審査の要「農業経営計画書」の書き方【具体的な数字例つき】
農地法3条の許可申請で一番重要なのが「農業経営計画書(営農計画書)」です。
農業委員会はこの計画書を通じて「この人に農地を任せて大丈夫か」を判断します。「農業をやりたいです!」という熱意だけでなく、具体的な数字と根拠のある計画が必要です。
「数字なんてどう出せばいいの?」と最初は途方に暮れましたが、地域のJAや農業指導センターに相談すると、その地域での標準的な収量や単価を教えてもらえます。一人で頑張らず、まず相談してみるのがおすすめです。
①作付計画(面積・収量の書き方)
「何を」「どのくらいの面積で」作るかを㎡単位で記入します。収量は「10a(1,000㎡)あたり」の標準値を参考に算出しましょう。
記入例:
- 水稲:2,000㎡ → 見込み収量 800kg/10a → 合計 160kg
- 大根:2,500㎡ → 見込み収量 4,000kg/10a → 合計 1,000kg
- ネギ:1,500㎡ → 見込み収量 2,500kg/10a → 合計 375kg
曖昧な数字は「実現性がない」と判断されます。「なんとなく1,000kgくらい」ではなく、根拠のある積み上げが必要です。
ちなみに「水田がないからお米は難しそう…」と思っている方へ朗報です。陸稲(りくとう)なら水田不要で、普通の畑でもお米を育てることができます。作付計画を考える際の参考にしてみてください。
▶ 陸稲の育て方|水田不要!畑・プランターでお米を育てる手順と注意点
②労働力の計画(従事日数の書き方)
許可の目安である「年間150日以上」を満たせるか、世帯員ごとに記入します。
記入例:
- 本人(私):180日
- 夫:80日(休日農作業)
- 同居の祖父:100日(補助作業)
注意点は、世帯の合計日数ではなく少なくとも1人が150日以上になっていることが重要です。うちの場合は私自身が本業として取り組む計画なので、私の従事日数を中心に組み立てました。
③収支計画の立て方
「粗収入(売上)」から「経営費(経費)」を差し引いて、利益を算出します。
収入の例:
- 米の販売:270,000円
- 大根の販売:1,100,000円
- ネギの販売:1,100,000円
- 合計:2,470,000円
経費の例:
- 種苗費:130,000円
- 肥料費:320,000円
- 農機具費:120,000円
- 光熱・動力費:80,000円
- 農地賃借料など:180,000円
- 合計:830,000円
販売先(道の駅・直売所・ネット販売など)も記入すると、計画の具体性が増します。どんぶり勘定はNG!数字が少しでも現実的であることが大切です。
④農業機械・施設の保有状況
取得する面積に見合った機械を保有・調達できるかを記入します。
記入例:
- トラクター:1台(所有)
- 耕運機:1台(所有)
- 軽トラック:1台(所有)
- 田植機:1台(知人から借用予定)
「これから揃える予定」という場合は、購入費用と資金調達方法(自己資金・融資)まで書くと説得力が増します。広い農地を希望するのに機械がほとんどない計画は、審査で「管理しきれない」と判断されるリスクがあります。
未経験者でも大丈夫!栽培技術を証明する3つの方法
農業未経験者が一番不安になるのが「技術的な経験がない」という点ではないでしょうか。でも、証明方法はちゃんとあります。
①過去の実績を示す
農業大学校や先進農家のもとで研修した経歴があれば、それが有力なアピールになります。また市民農園や家庭菜園での栽培実績も、「基礎的な技術の裏付け」として認められやすいです。
うちの祖父がずっと家庭菜園をやっていて、私も子どもたちと一緒に手伝ってきた実績があります。こういった身近な経験も無駄ではないんですね。
②指導者・研修先を確保する
「これから学ぶ計画」を具体的に示す方法です。農地の元の所有者や近隣の熟練農家から継続的に指導を受ける約束を取り付け、その旨を計画書に記載します。
地域のJAや農業指導センターとの連携も、計画の実現性を高める要素になります。「誰かに教われる環境がある」ことを示すのが大事なポイントです。
③研修計画を工程表で示す
農業大学校や先進農家での研修をこれから受ける予定の場合は、「いつ・どこで・何の技術を習得するか」を工程表として計画書に添付します。
農林水産省の「農業をはじめる.JP」というポータルサイトには、就農支援情報や研修機関の一覧、新・農業人フェア(相談イベント)の情報が掲載されているので、研修先探しに役立ちます。
農地付き空き家を活用するという選択肢
農地を買うと同時に「田舎への移住」も考えているなら、「農地付き空き家」という選択肢がとても魅力的です。
自治体の空き家バンクに登録されている農地付き空き家の場合、農業委員会の判断で面積要件をさらに緩和しているケースが多く、1アール(100㎡)や場合によっては1㎡から農地を取得できる自治体もあります。
メリットをまとめるとこんな感じです。
- 住居と農地をセットで取得できる:生活拠点と農地が隣接していて農作業がしやすい
- 自治体からの補助金が充実している:リフォーム費用に数十万〜最大100万円程度の補助が出る自治体も
- 手続きのサポートが手厚い:空き家バンクの担当窓口が農業委員会との調整までサポートしてくれることが多い
- 地域との橋渡しをしてくれる:定住コーディネーターなどが地域に馴染むためのサポートをしてくれる自治体も
移住も視野に入れているなら、農地付き空き家バンクへの登録・検索もあわせてチェックしてみてください。
農地付き空き家を探すなら、移住支援サービスの活用が近道です。物件探しから農業委員会との調整まで一括でサポートしてもらえる自治体や民間サービスも充実しています。まずはどんな物件があるかチェックしてみてください。
知らないと損!新規就農者が使える公的支援制度
「農業を始めたいけど、最初のうちは収入が不安…」そんな方に知ってほしいのが、農林水産省の「新規就農者育成総合対策」です。研修中から就農直後まで、段階的に支援してもらえます。
①就農準備資金(月12.5万円・最長2年)
就農前の研修期間中に受け取れる資金です。農業大学校などの認定研修機関で年間1,200時間以上研修した場合に、月12.5万円(年間最大150万円)を最長2年間受け取れます。
対象は原則49歳以下で、前年の世帯所得が600万円以下であること。研修後1年以内に就農しない場合は返還が必要なため注意が必要です。
②経営開始資金(月12.5万円・最長3年)
就農直後の経営が不安定な時期を支援する資金です。市町村から「青年等就農計画」の認定を受けた「認定新規就農者」になると申請できます。
月12.5万円(年間最大150万円)を最長3年間受け取れます。夫婦で就農する場合は1.5人分(月18.75万円)に増額されるのも魅力です。
③青年等就農資金(無利子融資・最大3,700万円)
農業機械や施設の整備に必要な資金を、無利子・無担保・無保証人で借りられる制度です。限度額は3,700万円(特例で1億円)、償還期限は17年以内と長く、農業への初期投資の負担を大きく軽減できます。
④経営発展支援事業(機械・施設の導入補助)
農業用機械や施設を導入する際に、補助対象事業費の上限1,000万円に対して最大1/2の補助が受けられます。認定新規就農者が金融機関から融資を受けることが条件です。
これらの支援制度の詳細は、市区町村の農政担当窓口や「農業をはじめる.JP」で確認できます。
なお、「認定新規就農者」になると青色申告が求められる場合があります。農業収入の帳簿管理や確定申告は早めに準備しておきましょう。農業所得は経費の扱いが複雑なため、税理士への相談がおすすめです。
農業所得の確定申告は、給与所得と違って経費の種類が多く複雑です。認定新規就農者になると青色申告も必要になるので、はじめての確定申告は税理士に相談しておくと安心です。
また青色申告には会計ソフトを使うと帳簿管理がぐっと楽になります。
農業の帳簿は毎日の記録が大切。スマホでレシートを撮るだけで自動仕訳してくれる会計ソフトなら、青色申告の書類作成までスムーズにこなせます。はじめての農業所得の確定申告にもおすすめです。
まとめ:農地購入は「計画の具体性」と「早めの相談」が成功のカギ
非農家でも農地を買えることが、今回の調査でよくわかりました。ポイントをまとめます。
- 非農家でも農地法3条の許可を受ければ農地を購入できる
- 許可の3条件は「全部効率利用」「年間150日以上従事」「地域との調和」
- 2023年4月の改正で下限面積50aの要件は廃止。小規模からスタートしやすくなった
- 審査の要は「農業経営計画書」。具体的な数字と根拠が命
- 未経験者は研修計画・指導者の確保・市民農園実績で技術を証明できる
- 農地付き空き家なら面積要件がさらに緩和され、補助金も充実
- 就農準備資金・経営開始資金(各月12.5万円)など公的支援が手厚い
- 就農後は農業所得の確定申告が必要。税理士への相談も検討を
4人の子どもを育てながら農業なんて無謀かな…と最初は思っていたけれど、調べれば調べるほど「やれる仕組みがちゃんとある」と実感しています。
まず農業委員会への事前相談から始めてみてください。窓口の方がとても親切に教えてくれます。農地を購入した後の確定申告や青色申告については、早めに専門家に相談しておくと安心ですよ。
農地購入後の確定申告や青色申告は、早めに専門家に相談しておくのが安心です。無料相談から利用できるサービスをぜひ活用してください。

