「大学職員って、楽そうでいいよね」
社会人になってから、何度その言葉を聞いたことか。

私は約18年間、某私立大学の事務職員として働いてきました(現在は転職済みです)。44歳、上から16歳・13歳・9歳・2歳の4人の子どもたちと、私の両親(67歳)と夫の大家族で暮らしながら、長年働いてきた経験をもとにこの記事を書いています。

楽そうに見える?
はい、私も入職前はそう思っていました(笑)。

でも実際に中に入ってみると、そこには一般企業とはまったく異なる種類のストレスが待ち構えていました。しかも、子育てと重なりながら年数が増えるにつれ、その消耗がじわじわとボディブローのように効いてくるんです。

この記事では、私が18年間で見てきた大学職員の「本当のストレス」を包み隠さず書きます。「どこに相談していいかわからない」「しんどいのに周りに理解してもらえない」と悩んでいる大学職員の方に、少しでも参考になれば嬉しいです。

大学職員のつらさは「配属ガチャ」でほぼ決まる

大学職員の仕事において、最も大きな問題のひとつが「配属ガチャ」です。

同じ大学職員という肩書きでも、どの部署に配属されるかによって、仕事のしんどさが文字通り「180度」変わります。

私は18年のキャリアの中で、教務課・総務課・学生支援センターなど複数の部署を経験しましたが、部署が変わるたびに「別の職場に転職したのかな」というくらいの違いを感じました。

「当たり」と言われる部署の実態

職員の間で羨望の的となるのが「ホワイト部署」と呼ばれる部署です。代表的なものをご紹介します。

図書館
職員の間では「最強のホワイト部署」として君臨しています。業務がルーティン化されており、年間を通じた業務量が安定しているため、残業が月5時間程度というケースも珍しくありません。

情報推進系(システム担当)
ネットワークやサーバー管理がメイン。新システム導入時以外は比較的落ち着いて働けます。技術系職員はここに配属されることを密かに祈っている人も多いです。

分館・分室勤務
本キャンパスから離れた小規模な建物での勤務。スタッフも少なく、「時空が違うかのようにゆったりした雰囲気」と語る職員が多い、知る人ぞ知る穴場です。

私の同僚で図書館に異動になった人が「毎日定時で帰れるし、精神的にすごく楽になった」と笑顔で話していました。当時の私が聞いたときは、うらやましくて涙が出そうになりましたよ(苦笑)。

「きつい」と言われる部署の実態

一方で、職員から「地獄」「メンタル崩壊の最前線」と呼ばれる部署があります。

教務課(学務課)
大学の「心臓部」でありながら、精神的負荷が最も高い部署のひとつ。数千人の履修・成績データをミスなく管理する重圧に加え、「学生のわがまま」と「教員の無理難題」の板挟みになります。4月の履修登録期間は毎日21時過ぎまで残業することも珍しくありません。

入試課(入試広報)
11月から3月の入試シーズンは「戦場」そのもの。ミスが全国ニュースになりかねない極限の緊張感のなか、休日出勤が常態化します。

財務・経理課
決算期の3月〜5月は激務が続きます。1円のミスも許されない正確性と、大学全体の予算を背負う責任の重さが圧し掛かります。

広報課
華やかに見えますが、実態は「血みどろの花形部署」と呼ばれるほど業務量が多い。不祥事やSNS炎上時は深夜・休日問わず対応に追われます。

病院事務(附属病院あり)
ドクターを頂点とする強固なヒエラルキーの最下層に置かれ、早朝勤務・患者対応など、一般の大学事務とは比較にならない過酷さがあります。

私自身、かつて教務課に配属されたことがあります。4月の入学式が終わった瞬間から怒涛の履修登録対応が始まり、帰宅すると末っ子がすでに寝ていて、「ごめんね」と心の中でつぶやきながら一人で夕飯を食べる夜が続きました。子育て中のワーママには、特にきつい部署だなと身に染みて感じています。

同じ給料なのに、部署で天と地の差がある

ここが大学職員のつらさの核心のひとつだと私は感じています。

同じ職員として採用され、同じ給与テーブルのなかにいるのに、ある部署は定時退社・残業ほぼゼロ、別の部署は深夜残業・休日出勤が常態化している。

この「見えない格差」が積み重なると、「自分だけがなぜ?」という感覚に陥ります。基本的に異動は数年単位で行われますが、「次の異動まで耐えればいいか」と自分を奮い立たせながら消耗していく——これが大学職員特有のストレスの構造です。

大学職員がじわじわ病む3つの構造的な理由

配属ガチャに加えて、大学という組織自体が持つ「構造的なストレス要因」があります。これは、たとえ楽な部署に配属されても、大学という組織にいる限りついてまわる問題です。

①「教員>職員」という絶対的なヒエラルキー

大学職員のストレスを語るとき、絶対に避けて通れないのが「教員との関係」です。

建前では「教職員は車の両輪」と言われます。でも現実は? 多くの場合、事務職員は「教員のお世話係」「下僕」のような立ち位置に置かれます。

  • 締切を守らない教員に何度お願いしても無視される
  • 理不尽な要求を突きつけられても「先生のご意向に沿う形で調整します」としか言えない
  • 「事務屋」と見下すような発言をされても、組織として逆らえない暗黙のルールがある

私が教務課に在籍していたとき、ある教員から「この学生の成績、なんとかならないか」と成績改ざんを匂わせるようなことを言われたことがありました。当然お断りしましたが、その後しばらく冷淡な態度をとられ続けました。

このような出来事が日常的に積み重なると、「私、何のために働いているんだろう」という無力感がどんどん大きくなっていきます。

②「去年通り」の呪縛と前例主義

大学組織には「変わらないことをよしとする」文化が根強くあります。

新しい提案をしても「前例がない」「会議にかけましょう」「もう少し検討が必要」と先送りが続く。一つのことを決めるのに、信じられないほどの時間と労力が必要です。

民間企業から転職してきた職員がこの「スピード感のなさ」に耐えられず精神的に追い詰められるケースは非常に多く、「拷問のような職場」と表現されることすらあります。

意欲がある人ほど、この「変えられない壁」にぶつかり消耗していく——これが大学という組織の皮肉な現実です。

③「黄金の足枷」で辞めたくても辞められない

大学職員あるあるとして「辞めたいけど辞められない」問題があります。

大学職員の給与水準は決して低くありません。大手私立大学であれば年収1,000万円超えも珍しくない。安定した雇用、長期休暇、世間体の良さ——これらが「黄金の足枷(ゴールデン・ハンドカフス)」となって、職員をその場に縛り付けます。

さらに厄介なのが「スキルの特殊性」。履修登録の管理、科研費の事務手続き、大学特有の会計処理——どれも大学でしか通用しないスキルばかりです。「転職しようにも、私のスキルって他で使えるの?」という自信のなさが、踏み出せない理由のひとつになっています。

しんどい、辞めたい。でも辞めたら今の給料を維持できるかわからない——この葛藤のなかでじわじわ消耗していく。これが大学職員の「静かな地獄」の正体です。

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「自分の市場価値がどのくらいあるのか」「大学職員のスキルは他で活かせるのか」を客観的に教えてもらえるだけで、頭の中がスッと整理されます。「辞める」か「続ける」かの判断は、プロの意見を聞いてからでも遅くありません。

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データが示す「大学職員はうつになりやすい」現実

「大学職員はメンタルを病みやすい」——これは感覚論ではなく、データが示している事実です。

国立大学法人のデータによると、長期病休者のうち「精神及び行動の障害」が64.6%と最多を占めており、全年代で第1位となっています。

また、公立学校の事務職員等の精神疾患による休職者率は1.07%に達しており、これは教育職員(0.77%)よりも高い水準です。「楽そうに見える」職員のほうが、実は教員より精神的に追い詰められているという現実——なかなか衝撃的な数字だと思います。

さらに深刻なのが、一度休職すると復職が長期化しやすいこと。精神疾患で休職した事務職員は、教育職員に比べて復職しにくく、そのまま退職に至るケースも少なくないとされています。

「新型うつ」も増えている大学職員

従来の「ひたすら落ち込む」タイプのうつ病とは別に、職場では不調なのに趣味やプライベートは楽しめる「現代型(非定型)うつ病」も大学職員に増えているとされています。

「うつ」というと「毎日ベッドから出られない」というイメージがあるかもしれません。でも実際は、月曜日の朝に体が動かなくなる、出勤しようとすると頭痛や腹痛が出る、職場のことを考えると涙が止まらなくなる——という形で現れることが多いです。

「まさか私が」と思っていても、実はそのギリギリ手前まで来ていることがある。4人の子育てをしながらフルタイムで働き続けた私には、「消耗しているのに辞められない」という感覚がよくわかります。

相談できる窓口を知っておく

大学職員が利用できる相談窓口は複数あります。

  • ハラスメント相談室(各大学内設置)
  • 保健管理センター・健康管理室(産業医・カウンセラーに相談可)
  • 外部相談ホットライン(EAP)(24時間対応のものも)

「まだそこまで深刻じゃない」と思っているうちに相談しておくのが鉄則です。深刻化してからでは、回復にかかる時間も長くなります。

それでも続けるなら知っておきたい「村社会」の生き方

「すぐに転職するのは難しい」「もう少し続けてみる」という方に向けて、大学という村社会で消耗せずに生き残るための現実的な戦略をご紹介します。

「前例」に乗っかり、目立たず動く

大学で新しいことをしたいなら、まず前例を徹底的に調べること。「去年もこうしていた」という事実を盾にしながら動くと、不必要な摩擦を避けられます。変革は「根回し」から。会議で突然提案するのではなく、事前に関係者に個別に当たり、合意を形成してから場に出す——この手順を踏むだけで、通過率が劇的に変わります。

キーパーソンを早期に見抜く

どの部署にも「役職よりも発言力がある人」が存在します。いわゆるお局的なベテラン職員だったり、学内で影響力を持つ特定の教員だったり。赴任直後に、このキーパーソンを観察して見極めることが生存戦略の第一歩。そのうえで、深く関わりすぎず、適切な距離感を保つのが大事です。

「前任者のせい」という生存戦略

部署特有のローカルルールを知らないことを責められたとき——「前任から引き継ぎがなかったので存じませんでした」と前任のせいにしてかわすのも、れっきとした生存術です。真面目すぎる人ほど正直に謝って自分を責めてしまいますが、それでは消耗するだけ。適度に受け流す柔軟性が、長く働き続けるための秘訣でもあります。

ただし、根本的な「組織の構造」は個人の努力で変えることはできません。転職先選びで「次こそ失敗したくない」と思うなら、企業の内側の声を事前に確認できるサービスを使うのがおすすめ。ワンキャリア転職は「中の人のリアルな声」をもとに企業選びができる転職サービスです。「次の職場も似たような雰囲気だったらどうしよう」という不安がある方に特に有効。まず会員登録だけでも情報収集の引き出しが増えます。

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「もう限界かも」と感じたときの選択肢

しんどさの正体が「配属された部署の問題」なのか、「大学という組織そのものの問題」なのか——まずそこを整理することが大切です。

部署の問題なら、異動願いを出す、上司に相談するという手段があります。

大学という組織の問題なら、異動しても根本的な解決にはならないため、転職を検討する価値があります。

「転職したいけど、大学職員のスキルって他で通用するの?」という不安をよく聞きますが、実は思っているよりも大学職員のスキルは評価されます。事務処理能力の高さ、調整力、書類作成の精度——「大学職員ならではの丁寧さ」を評価してくれる企業は確実に存在します。

自分の市場価値を正しく把握するためにも、まずはキャリアの専門家に話を聞いてもらうことをおすすめします。一人で抱え込まないでほしいです。

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まとめ

大学職員のストレスやつらさは、個人の弱さではありません。

「配属ガチャ」による極端な業務格差、教員との歪んだ階層関係、前例主義に閉じた村社会の文化、そして辞めたくても辞められない黄金の足枷——これらはすべて、大学という組織が持つ「構造的な問題」です。

データが示す通り、大学事務職員の精神疾患による休職率は教員より高く、「楽そうに見える」からこそ周囲に理解されにくい孤独もあります。

私自身、4人の子育てをしながら長年その「しんどさ」と向き合ってきました。今振り返れば、もっと早くプロのキャリアカウンセラーに相談していれば、と思うことがあります。

「今の環境が当たり前じゃないかもしれない」と気づくことが、第一歩です。転職するもよし、続けるもよし。でもまずは、自分の状況を客観的に見てもらう場所を持っておくことをおすすめします。

 

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